薬局の個別指導に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、近畿厚生局の薬局の保険個別指導での、薬学管理料(薬剤服用歴管理指導料、薬剤情報提供文書、かかりつけ薬剤師指導料、服薬情報等提供料)、事務的事項(登録・届出事項、掲示事項、薬剤師数、一部負担金の取扱い)に関する事項の指摘事項をご紹介します。指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成29年度 個別指導(調剤)における主な指摘事項」に基づいており、弁護士が適宜修正等しています。
薬局・薬剤師の個別指導については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。
【コラム】薬局の個別指導と監査の上手な対応法
1 目次(近畿厚生局の調剤指摘事項)
V 薬学管理料に関する事項
1 薬剤服用歴管理指導料
2 薬剤服用歴の記録
3 薬剤情報提供文書
4 経時的に薬剤の記録が記入できる薬剤の記録用の手帳
5 薬剤服用歴の記録(電磁的記録の場合)の保存等
6 麻薬管理指導加算
7 重複投薬・相互作用等防止加算
8 特定薬剤管理指導加算
9 乳幼児服薬指導加算
10 かかりつけ薬剤師指導料
11 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
12 服薬情報等提供料
13 その他
W 事務的事項
1 登録・届出事項
2 掲示事項
3 薬剤師数
4 一部負担金等の取扱い
X その他
1 保険請求に当たっての請求内容の確認
2 関係法令の理解
3 指導対象薬局の開設者がほかの保険薬局も開設している場合
2 薬学管理料に関する事項
1 薬剤服用歴管理指導料
(1)薬剤服用歴管理指導料の算定について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 手帳を持参していない患者に対して、薬剤服用歴管理指導料の「注1」ただし書の点数を算定していない。
A 手帳を持参している患者に対して、薬剤服用歴管理指導料の「注1」ただし書の点数を算定している。
B 6か月以内に処方せんを持参した患者に対して、薬剤服用歴管理指導料2を算定している。
(2)次の事項について、処方せんの受付後、薬を取りそろえる前に患者等に確認していない不適切又は不十分な例が認められたので改めること。
@ 服薬状況
A 残薬の状況
B 患者の服薬中の体調の変化
C 他科受診の有無
D 副作用が疑われる症状の有無
E 後発医薬品の使用に関する患者の意向
(3)処方せんの受付後、薬を取りそろえる前に患者等に対して行う次の事項の確認を保険薬剤師が行っていない(事務員が行っている)ので改めること。
@ 服薬状況
A 残薬の状況
B 患者の服薬中の体調の変化
C 他科受診の有無
D 後発医薬品の使用に関する患者の意向
(4)処方せんの受付後、薬を取りそろえる前に患者等に対して行う確認を、薬を取りそろえた後に行っている不適切な例が認められたので改めること。
2 薬剤服用歴の記録
(1)薬剤服用歴の記録について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 次の事項の記載がない、不適切である、又は乏しい。
ア 被保険者証の記号番号
イ 処方日
ウ 処方内容
エ 調剤日
オ 処方内容に関する照会の要点等
カ 体質
キ アレルギー歴
ク 副作用歴
ケ 患者又はその家族等からの相談事項の要点
コ 服薬状況
サ 残薬状況の確認
シ 残薬状況の確認ができなかった場合、その旨
ス 患者の服薬中の体調の変化
セ 併用薬等の情報
ソ 合併症を含む既往歴に関する情報
タ 他科受診の有無
チ 副作用が疑われる症状の有無
ツ 飲食物(服用中の薬剤との相互作用が認められているものに限る。)の摂取状況
テ 後発医薬品の使用に関する患者の意向
ト 手帳による情報提供の状況
ナ 服薬指導の要点
ニ 指導した保険薬剤師の氏名
A 訂正が適切でない。
ア 二本線で抹消しておらず、修正前の記載内容が判読不能である。
B 薬剤服用歴の記録への記載が、指導後速やかに完了していない。
C どのような副作用等に着目して聴取を行ったか等、薬学的な観点から聴取・確認した内容を記載し、患者への指導により活用できる記録となるよう努めること。
D 同一患者の薬剤服用歴の記録について、必要に応じて直ちに参照できるよう保存・管理していない。
3 薬剤情報提供文書
(1)薬剤情報提供文書について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 次の事項の記載がない、不適切である、又は乏しい
ア 用法
イ 用量
ウ 副作用
エ 相互作用
A 用法、用量、効能、効果、副作用及び相互作用に関する記載について、患者等が理解しやすい表現になっていない。
4 経時的に薬剤の記録が記入できる薬剤の記録用の手帳
(1)手帳による情報提供について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 手帳に次の事項を記載していない又は不十分である。
ア 用法
イ 用量
5 薬剤服用歴の記録(電磁的記録の場合)の保存等
(1)次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 運用管理規程がない。
A 電子保存の真正性について、次の問題が認められた。
ア パスワードの有効期間(最長でも2ヶ月以内)を設定していない。
(2)最新版の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」に準拠するよう運用管理規程の更新を行う等、より適切な運用に努めること。
6 麻薬管理指導加算
(1)麻薬管理指導加算について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 麻薬の服用状況、残薬の状況,保管状況を確認していない。
A 残薬の取扱方法も含めた保管取扱い上の注意等に関し必要な指導を行っていない。
B 麻薬による鎮痛等の効果や副作用の有無の確認を行っていない。
C 薬剤服用歴の記録に指導の要点を記載していない。
D 鎮痛等の効果や副作用の有無の確認の記録が薬剤服用歴に記載不十分である。
7 重複投薬・相互作用等防止加算
(1)重複投薬・相互作用等防止加算について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 処方の変更が行われなかった場合に算定している。
A 薬剤服用歴の記録に処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を記載していない。
8 特定薬剤管理指導加算
(1)特定薬剤管理指導加算について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 特に安全管理が必要な医薬品に該当しない医薬品について算定している。
A 特に安全管理が必要な医薬品が複数処方されている場合に、その全てについての必要な薬学的管理及び指導を行っていない。
B 対象となる医薬品に関して患者又はその家族等に対して確認した内容及び行った指導の要点を薬剤服用歴の記録に記載していない。又は記載が乏しい。
C これまでの指導内容等も踏まえた適切な指導を行っていない。
D 従来と同一の処方内容にもかかわらず当該加算を継続して算定する場合に、特に指導が必要な内容を薬剤服用歴の記録に記載していない。
E 保険薬剤師自身に行った調剤に対して算定している。
9 乳幼児服薬指導加算
(1)乳幼児服薬指導加算について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 乳幼児に係る処方せんの受付の際に確認した、体重、適切な剤形その他必要な事項等について、薬剤服用歴の記録及び手帳に記載していない。
A 患者の家族等に対して行った適切な服薬方法、誤飲防止等の必要な服薬指導の要点について、薬剤服用歴の記録及び手帳に記載していない。
10 かかりつけ薬剤師指導料
(1)かかりつけ薬剤師指導料について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 患者の署名付きの同意書が作成されていない。
A 患者の同意を得た旨を薬剤服用歴の記録に記載していない、又は記載が乏しい。
B かかりつけ薬剤師以外の保険薬剤師が服薬指導等を行った場合にかかりつけ薬剤師指導料を算定している。
(2)かかりつけ薬剤師が行う服薬指導等について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 薬剤服用歴管理指導料に係る業務について
ア 薬剤服用歴の記録について、記載が乏しい。
イ 処方を行った保険医に対して行った情報提供の内容について、薬剤服用歴の記録への記載が乏しい。
A 患者が受診している全ての保険医療機関の情報、服用している処方薬、要指導医薬品及び一般用医薬品並びに健康食品等について、薬剤服用歴の記録への記載が乏しい。
11 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
(1)在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の算定について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 次の事項について、薬剤服用歴の記録への記載が乏しい、又は記載していない。
ア 保険医から緊急の要請があった日付及び要請の内容並びに要請に基づき訪問薬剤管理指導を実施した旨
イ 訪問に際して実施した薬学的管理指導の内容
ウ 処方医に対して提供した訪問結果に関する情報の要点
12 服薬情報等提供料
(1)服薬情報等提供料について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 患者1人につき同一の保険医療機関の同一の診療科に対して情報提供を行った場合について、月1回を超えて算定している。
A 別紙様式1又はこれに準ずる様式の文書等に必要な事項の記載が乏しい。
B 保険医療機関へ必要な情報提供を行った場合の内容等について、薬剤服用歴の記録を記載していない。
13 その他
(1)薬学管理の必要性が乏しい当該保険薬局の管理薬剤師に対し、薬学管理料を算定している不適切な例が認められたので改めること。
3 事務的事項
1 登録・届出事項
(1)次の届出事項の変更が認められたので、速やかに近畿厚生局に届け出ること。
@ 管理薬剤師の異動
A 保険薬剤師の異動
B 開局時間の変更
C 開局日の変更(祝日休局→開局)
(2)施設基準の届出について、届出要件に充分留意し、届出の内容と異なった事情が生じた場合には、速やかに届出すること。
2 掲示事項
(1)掲示事項について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 薬剤服用歴管理指導料に関する事項の掲示がない。
A 近畿厚生局に届け出た事項の掲示がない。
B 明細書の発行状況の掲示がない又は不十分である。
C 明細書の発行状況に関する事項の掲示について、一部負担金等の支払いがない患者に関する記載がない。
D 後発医薬品の調剤を積極的に行っている旨を保険薬局の外側の見えやすい場所に掲示していない。
E 開局時間を保険薬局の内側及び外側のわかりやすい場所に表示していない。
F 届出と異なる開局時間の掲示がされている。
(2)掲示内容について、患者が理解しやすい表示となるよう努めること。
3 薬剤師数
(1)処方せん受付枚数に比べて保険薬剤師数が少ないので改めること。
4 一部負担金等の取扱い
(1)一部負担金関係
@ 一部負担金について、次の不適切な例が認められたので改めること。
ア 未収金を管理していない。
イ 調剤録と日計表の一部負担金が相違している。
A 領収証について、定められた様式に準拠していない次の不適切な事項が認められたので改めること。
ア 消費税に関する文章が記載されていない。
(2)明細書関係
@ 明細書について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
ア 明細書を発行していない(正当な理由がない限り無償交付する必要がある)。
4 その他
1 保険請求に当たっての請求内容の確認
(1)保険薬剤師が行った調剤に関する情報の提供等について、保険薬局が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めていないので改めること。
@ 保険薬剤師による処方せん、調剤録、調剤報酬明細書の突合・確認が行われていない。又は不十分である。
A 1回の調剤に対し重複して療養の給付に関する費用の請求を行っている。
2 関係法令の理解
(1)健康保険法をはじめとする社会保険各法並びに医薬品医療機器等法等の保険医療に関する法令の理解が不足しているので、法令に関する理解により一層努めること。
3 指導対象薬局の開設者が他保険薬局も開設している場合
(1)開設者は、今回の指導結果の内容を踏まえ、同様に開設者となっている他の保険薬局について状況の把握を行い、業務内容等について必要な改善を行う等、保険調剤の質的向上及び一層の適正化を図ること。
個別指導に臨む薬局の方は、お電話下さい。指導への対応を弁護士がアドバイスします。
薬局・薬剤師の指導、監査のコラム
薬局・薬剤師の指導、監査のコラムの一覧です。
個別指導(薬局)の際に、また日常の薬局運営にご活用下さい。
薬局個別指導での指摘事項
関東信越厚生局の指摘事項
平成26年度
1
関東信越厚生局の個別指導(1):調剤、調剤録、調剤技術料
2
関東信越厚生局の個別指導(2):薬学管理料、請求事務
平成27年度
3
関東信越厚生局の個別指導(3):調剤内容、処方せん
4
関東信越厚生局の個別指導(4):薬剤服用歴、明細書
平成28年度
5
関東信越厚生局の個別指導(5):調剤技術料、薬学管理料
6
関東信越厚生局の個別指導(6):届出事項、一部負担金
東海北陸厚生局の指摘事項
7
東海北陸厚生局の個別指導(1):処方せん、調剤
8
東海北陸厚生局の個別指導(2):調剤録、調剤技術料
9
東海北陸厚生局の個別指導(3):薬学管理料
10
東海北陸厚生局の個別指導(4):届出事項、掲示事項
近畿厚生局の指摘事項 平成28年度
11
近畿厚生局の個別指導(1):処方せん、調剤、調剤録
12
近畿厚生局の個別指導(2):調剤技術料、調剤基本料
13
近畿厚生局の個別指導(3):薬剤服用歴管理指導料
14
近畿厚生局の個別指導(4):届出・掲示事項、一部負担金
平成29年度
15
近畿厚生局の個別指導(5):調剤全般、調剤技術料
16
近畿厚生局の個別指導(6):薬学管理料、事務的事項
平成30年度
17
近畿厚生局の個別指導(7):調剤全般、調剤技術料
18
近畿厚生局の個別指導(8):薬学管理料、事務的事項
保険薬局・保険薬剤師の取消の実例
1
保険薬局・薬剤師の取消の実例(1):情報提供の個別指導
2
保険薬局・薬剤師の取消の実例(2):無資格調剤による取消
3
保険薬局・薬剤師の取消の実例(3):監査拒否による取消処分
4
保険薬局・薬剤師の取消の実例(4):虚偽の処方せんの不正請求
5
保険薬局・薬剤師の取消の実例(5):別薬局の調剤分の不正請求
6
保険薬局・薬剤師の取消の実例(6):医院の個別指導からの監査
7
保険薬局・薬剤師の取消の実例(7):架空請求有罪判決での監査
8
保険薬局・薬剤師の取消の実例(8):処方せん付替えの不正請求