薬局の個別指導、監査に強い弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、同一の開設者が別に開設する薬局で行われた調剤分をその薬局で行ったものとして不正請求を行い、取消相当となった薬局の実例(不正請求での取消相当)をご紹介します。東北厚生局の平成26年10月付けの取消相当の実例であり、説明のため簡略化等をしています。
薬局・薬剤師の個別指導と監査については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。
【コラム】薬局の個別指導と監査の上手な対応法
T 別の保険薬局で行われた調剤分の不正請求
1 元保険薬局の指定の取消相当
東北厚生局の公表資料によれば、取消相当の内容は以下のとおりです。
【内容】
元保険薬局の指定の取消相当
取消年月日:平成26年10月
取消相当とは、取消の行政処分を行う前に、保険薬局(又は保険薬剤師)が、廃止届(又は辞退届)を提出している場合等は、保険薬局の指定の取消(又は保険薬剤師の登録の取消)の行政処分を行えない。そのため、地方社会保険医療協議会から「取消相当」との建議を受け、「取消」と同様に(一定期間再指定(又は再登録)を認めない。)取扱うようにするためのものである。
2 取消相当の理由
東北厚生局の公表資料によれば、取消相当の主な理由は以下のとおりです。なお、取消相当の扱いにあたっては、平成26年10月に開催された東北地方社会保険医療協議会で「元保険薬局の指定の取消相当」の建議がなされています。
【元保険薬局の事故】
1 保険調剤の架空請求
実際に行っていない保険調剤を行ったものとして調剤報酬を不正に請求していた。
例1:
特定の患者の処方せんについて、薬剤師が適正に調剤していないにもかかわらず不正に調剤報酬を請求していた。
例2:
開設者が別に開設する保険薬局で行われた調剤分について、当該保険薬局で調剤が行われたものとして不正に調剤報酬を請求していた。
【コメント
不正請求の厚生局の分類上、月単位(レセプト単位)で判断し、その月に保険調剤をしていないにもかかわらず保険調剤をしたものとして調剤報酬を請求すれば、その月について架空請求になります。
別の薬局で調剤したものについては、同一の開設者であったとしても、その薬局で調剤をしていないことから、本ケースでは、架空請求に分類されています。ただし、細かいですが、類似のケースで、「架空請求」ではなく「その他の請求」に分類されているケースもありますので、注意が必要です。
2 保険調剤の付増請求
実際に行った保険調剤に行っていない保険調剤を付け増して、調剤報酬を不正に請求していた。
例:
調剤応需体制のある時間に処方せんの受付けをしたにもかかわらず、一部負担金は患者に請求せず時間外加算を付増請求していた。
【コメント】
付増請求は、厚生局の分類上、月単位(レセプト単位)で判断し、実際に調剤を行っているものの、回数、日数、数量、内容等を実態より多く請求する不正請求です。
薬局が付増請求を行っている場合、患者から実際に支払いを受けた一部負担金の金額と、調剤報酬の請求点数から算出される一部負担金の金額に相違が生じ、金額が合わないケースがあります。
3 調剤報酬の不正請求額
東北厚生局の公表資料によれば、監査で確認した不正請求額(社保・国保・後期高齢の合計)は以下のとおりです。
【不正請求額】
481名分 481カ月分 464万5812円
※上記金額は監査で判明したものだけであり、最終的な不正の金額は、今後精査していくこととしているので確定していない。
【コメント】
厚生局として1件の監査にかけられる人的・時間的な制約がありますので、監査において、その薬局のすべての不正・不当請求について厚生局が完全に調査し明らかにするとは限らないというべきです。
U 別の保険薬局で保険請求をさせた不正請求
1 元保険薬局の指定の取消相当
東北厚生局の公表資料によれば、取消相当の内容は以下のとおりです。
【内容】
元保険薬局の指定の取消相当
取消年月日:平成26年10月
2 取消相当の理由
東北厚生局の公表資料によれば、取消相当の主な理由は以下のとおりです。なお、取消相当の扱いにあたっては、平成26年10月に開催された東北地方社会保険医療協議会で「元保険薬局の指定の取消相当」の建議がなされています。
【元保険薬局の事故】
1 他店舗での保険請求
当該調剤薬局で調剤を行ったものを、開設者が同一の他店舗での保険調剤分として保険請求させていた。
例:
当該調剤薬局で調剤したものを、開設者が同一の上記Tの取消相当に係る調剤薬局で不正に保険請求させていた。
【保険薬剤師の事故】
1 調剤録の不実記載
保険調剤について、調剤録に不実記載していた。
例1:
調剤基本料について届出していない後発医薬品調剤体制加算の点数(平成22年度調剤報酬改正前の点数)を調剤録に記載した。
例2:
服薬情報提供料及び服薬指導情報提供加算について実際には行っていないにもかかわらず、調剤録に記載した。
3 調剤報酬請求の不正
東北厚生局の公表資料によれば、監査で確認した調剤報酬請求の不正(社保・国保・後期高齢の合計)は以下のとおりです。
【不正額】
15名分 15カ月分 19万8085円
※上記金額は、参考として計上しているものであり、実際の不正請求金額は、同一開設者の上記Tの取消相当に係る調剤薬局の事故として計上している。最終的な不正請求金額は、今後精査していくこととしているので確定していない。
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薬局・薬剤師の指導、監査のコラム
薬局・薬剤師の指導、監査のコラムの一覧です。
別薬局の調剤分の不正請求の実例の他、様々なケースをご紹介しています。
個別指導(薬局)の際に、また日常の薬局運営にご活用下さい。
薬局の指導監査
1
薬局の個別指導と監査
保険薬局・保険薬剤師の取消の実例
1
保険薬局・薬剤師の取消の実例(1):情報提供の個別指導
2
保険薬局・薬剤師の取消の実例(2):無資格調剤による取消
3
保険薬局・薬剤師の取消の実例(3):監査拒否による取消処分
4
保険薬局・薬剤師の取消の実例(4):虚偽の処方せんの不正請求
5
保険薬局・薬剤師の取消の実例(5):別薬局の調剤分の不正請求
6
保険薬局・薬剤師の取消の実例(6):医院の個別指導からの監査
7
保険薬局・薬剤師の取消の実例(7):架空請求有罪判決での監査
8
保険薬局・薬剤師の取消の実例(8):処方せん付替えの不正請求
9
保険薬局・薬剤師の取消の実例(9):不正請求の匿名の情報提供
10
保険薬局・薬剤師の取消の実例(10):不正請求の厚生局への報告
11
保険薬局・薬剤師の取消の実例(11):不正請求の報告書の疑義
12
保険薬局・薬剤師の取消の実例(12):不正な処方箋の集約の通報
13
保険薬局・薬剤師の取消の実例(13):関東信越厚生局の監査
14
保険薬局・薬剤師の取消の実例(14):処方箋の集中率の不正操作
15
保険薬局・薬剤師の取消の実例(15):処方箋受付回数の不正操作