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調剤報酬の不正請求を厚生局に自主的に報告し個別指導、監査、取消処分となった実例です。個別指導、監査は、薬局の指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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保険薬局・保険薬剤師の取消の実例(10):不正請求の厚生局への報告

薬局の個別指導、監査に強い弁護士の鈴木陽介です。


ここでは、処方箋の付け替えの不正請求を薬局が厚生局に自主的に書面で報告し、個別指導、監査、保険薬局の指定の取消しとなった実例をご紹介します。東海北陸厚生局の令和3年8月付けの取消処分の実例であり、説明のため簡略化等をしています。

薬局・薬剤師の個別指導と監査については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。

【コラム】薬局の個別指導と監査の上手な対応法

厚生局への不正請求の自主的な報告での取消処分の実例


 1 監査に至った経緯

東海北陸厚生局の公表資料によれば、監査の経緯は以下のとおりです。

1 不正請求の厚生局への自主的な書面報告
平成31年2月8日、東海北陸厚生局富山事務所に、薬局を開設する株式会社の職員が来所し、係る薬局において処方箋の不正操作が行われていたとして報告書の提出があった。当該報告は、平成29年2月に施設入所者に係る処方箋60枚について、実際は他の保険薬局で調剤し薬剤を交付しているにもかかわらず、係る薬局において調剤を行ったとして調剤報酬を請求していたとの内容であった。また、施設基準として届出した調剤基本料1の算定に影響を与えている旨も併せて報告があった。

【コメント】
本ケースでは、薬局側から、いわゆる処方箋の付け替えの不正請求が行われていたとの、厚生局への自主的な報告がなされています。厚生局の係る公表資料からは、自主的な不正請求の報告に至った背景は不明ですが、薬局側としては、自主的に積極的に不正請求を報告しているのですから、厚生局の取消処分ではない寛大な取扱いを期待したところと思われます。

2 個別指導の実施、指導の中断
令和元年9月26日、個別指導を実施したところ、上記の報告書のとおり、不適切な処方箋の取扱い及び調剤報酬の不正請求の事実を一部確認するも、精査する必要が生じたため個別指導を中断した。

【コメント】
個別指導が実施され、中断に至っています。監査を実施する場合、個別指導を中断し、その後、個別指導を中止してから監査とする流れがスタンダードであり、個別指導が中断となった場合、ケースバイケースであるものの、精査等の上での監査の実施を念頭に中断がなされているケースが稀ではないものと考えられます。

3 個別指導の再開、中止、監査の実施
令和元年12月5日、個別指導を再開し、実際には他の保険薬局で施設入所者の処方箋に係る調剤を行い、薬剤を交付していたにもかかわらず、係る薬局で調剤したものとして調剤録を作成し、調剤報酬を請求していたことを確認した。このことから、不適切に操作した処方箋に基づき調剤報酬を請求していたこと、及び処方箋集中率が要件の一つとなっている「調剤基本料1」の施設基準について、届出時から適合していなかったことが強く疑われたため、個別指導を中止し、監査を実施した。

【コメント】
いわゆる処方箋の付け替えの不正請求が確認され、監査の実施に至っています。

不正請求の報告書の提出が薬局側からなされており、不正請求の疑義は認められるものと思われるところですが、直ちに監査の実施とはせず、厚生局は、個別指導を実施し関係書類等を確認の上で、監査の実施としています。本ケースのように、不正請求の疑義が生じていると考えられるケースでも、直ちに監査とはせず、まずは個別指導を実施し、その状況を勘案して精査の上で監査の実施となることが厚生局の指導監査の典型的な流れであると考えられます。

 2 取消処分の理由

東海北陸厚生局の公表資料によれば、行政処分の理由となる主な事実は以下のとおりです。

1 処方箋の付け替えでの不正請求
実際には、同一開設者の他の保険薬局で行った調剤を当該保険薬局で調剤を行ったものとして、調剤報酬を不正に請求していた。

【コメント】
薬局が自主的に厚生局に当初報告したとおり、処方箋の付け替えの不正請求が確認されています。

自主的に不正請求を厚生局に報告したとしても、本ケースのように、結果的に取消処分となる場合がありますので、留意が必要です。自主的な厚生局への不正請求の報告は、行政処分等の判断で薬局側に有利に考慮され得る1つの事情とはなり得ても、最終的な取消処分等の判断は、不正の態様・内容等を勘案し総合的になされるものと考えるべきと思料します。

2 「調剤基本料1」の施設基準の虚偽の届出
「調剤基本料1」の施設基準(特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が9割5分以下)に適合していないにもかかわらず、同一開設者の他の保険薬局で行った調剤を当該保険薬局で調剤を行ったものとして操作し、本来は「調剤基本料3」の施設基準で届出しなければならないところ、「調剤基本料1」の施設基準に適合しているとして虚偽の届出を行い、調剤報酬を不正に請求していた。

3 不正請求分の一部負担金の受領
不正請求分に係る一部負担金を受領していた。

【コメント】
調剤報酬の不正請求について、その不正請求分に対応する一部負担金を患者から受領していた場合、その受領分は患者に返還すべきことになります。

施設基準に係る不正請求などでは、この患者への一部負担金の返還手続きが、件数が膨大になるなど、重大な状況となり得ますので、留意が必要です。

 3 調剤報酬の不正請求額

東海北陸厚生局の公表資料によれば、監査において判明した不正請求金額は、以下のとおりです。
 
 不正請求額 1644名分 7164件 176万3297円

※ 再指定について、原則として、指定の取消年月日から5年間は保険薬局の再指定は行わない。


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薬局・薬剤師の指導、監査のコラム


薬局・薬剤師の指導、監査のコラムの一覧です。
不正請求の厚生局への自主的な報告での取消処分の実例の他、様々なケースをご紹介しています。
個別指導(薬局)の際に、また日常の薬局運営にご活用下さい。

 薬局の指導監査

1 薬局の個別指導と監査

 保険薬局・保険薬剤師の取消の実例

1  保険薬局・薬剤師の取消の実例(1):情報提供の個別指導

2  保険薬局・薬剤師の取消の実例(2):無資格調剤による取消

3  保険薬局・薬剤師の取消の実例(3):監査拒否による取消処分

4  保険薬局・薬剤師の取消の実例(4):虚偽の処方せんの不正請求

5  保険薬局・薬剤師の取消の実例(5):別薬局の調剤分の不正請求

6  保険薬局・薬剤師の取消の実例(6):医院の個別指導からの監査

7  保険薬局・薬剤師の取消の実例(7):架空請求有罪判決での監査

8  保険薬局・薬剤師の取消の実例(8):処方せん付替えの不正請求

9  保険薬局・薬剤師の取消の実例(9):不正請求の匿名の情報提供

10 保険薬局・薬剤師の取消の実例(10):不正請求の厚生局への報告

11 保険薬局・薬剤師の取消の実例(11):不正請求の報告書の疑義

12 保険薬局・薬剤師の取消の実例(12):不正な処方箋の集約の通報

13 保険薬局・薬剤師の取消の実例(13):関東信越厚生局の監査

14 保険薬局・薬剤師の取消の実例(14):処方箋の集中率の不正操作

15 保険薬局・薬剤師の取消の実例(15):処方箋受付回数の不正操作

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