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薬局の保険調剤(保険薬剤師、保険薬局と医療保険制度)のコラムです。保険薬局・保険薬剤師への個別指導、監査への帯同は、指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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薬局・薬剤師の保険調剤(1):保険薬局・保険薬剤師と医療保険制度

薬局の個別指導、監査に強い弁護士の鈴木陽介です。


ここでは、薬局の保険調剤(保険薬局・保険薬剤師と医療保険制度)についてご説明します。内容は、厚生労働省保健局医療課医療指導監査室の公表資料「保険調剤の理解のために(平成28年度)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。

薬局・薬剤師の個別指導と監査については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。

【コラム】薬局の個別指導と監査の上手な対応法

T 医療保険制度のしくみ


 1 医療保険制度の種類

 わが国の医療保険は、サラリーマン等の被用者を対象とした被用者保険制度(健康保険(健保)、共済保険(共済)、船員保険(船保)等)と、自営業者等を対象とした国民健康保険制度とに大きく二分される。
 高齢者は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく医療保険制度が適用となる。

 2 医療保険制度の特徴

 わが国の医療保険制度の特徴は、「国民皆保険制度」、「現物給付制度」、「フリーアクセス」の3点に集約される。

国民皆保険制度
 すべての国民が、何らかの公的医療保険に加入している。
現物給付制度
 医療行為(現物)が先に行われ、費用は保険者から医療機関へ事後に支払われる。
フリーアクセス
 自らの意思により、自由に医療機関を選ぶことができる。

 3 保険調剤のしくみ

 患者は、保険薬局の窓口で一部負担金を支払い、残りの費用については、保険者から審査支払機関を通じ、保険薬局に支払われることとなる。
 この仕組みは健康保険法その他の医療保険各法に規定されており、保険調剤は「保険者と保険薬局との間で交わされた公法上の契約に基づく“契約調剤”」と称される。

 4 国民医療費

(1)国民医療費の状況
 平成25年度の国民医療費は40兆610億円、前年度の39兆2,117億円に比べ8,493億円、2.2%の増加となっている。

(2)財源別国民医療費
 財源別にみると、公費は15兆5,319億円(構成割合38.8%)、うち国庫は10兆3,636億円(同25.9%)、地方は5兆1,683億円(同12.9%)となっている。保険料は19兆5,218億円(同48.7%)、うち事業主は8兆1,232億円(同20.3%)、被保険者は11兆3,986億円(同28.5%)となっている。また、その他は5兆72億円(同12.5%)、うち患者負担は4兆7,076億円(同11.8%)となっている。 

U 保険薬剤師、保険薬局の責務


 1 保険薬剤師・保険薬局

(1)保険薬剤師
 「保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた薬剤師(「保険薬剤師」という。)でなければならない」と規定されている。〔健康保険法64条〕
 この厚生労働大臣の登録は、薬剤師国家試験に合格し、薬剤師免許を受けることにより自動的に登録されるものではない。薬剤師自らの意思により、所在地を管轄する地方厚生(支)局長(所在地を所管する地方厚生(支)局の事務所がある場合には、当該事務所を経由して行う)へ申請する必要がある。〔健康保険法71条〕

(2)保険薬局
 保険薬局の指定
 薬局開設者の申請により厚生労働大臣が指定する。〔健康保険法65条〕

(3)保険薬剤師、保険薬局の責務
ア 保険薬剤師
 「保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師は、厚生労働省令で定めるところにより健康保険の調剤に当たらなければならない。」とされている。〔健康保険法72条より〕
 また、「保険薬局は、当該保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師に、厚生労働省令で定めるところにより、調剤に当たらせるほか、厚生労働省令で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない。」とされている。〔健康保険法70条1項より〕
 ここで言う厚生労働省令が「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)」であり、保険調剤を行う上での基本的事項を定めたものである。
イ 保険薬局
 健康保険法76条(療養の給付に関する費用)では、次のとおり規定されている。
 「保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
 2 前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする。」
 ここでいう「厚生労働大臣が定めるところ」とは、「診療報酬の算定方法」(平成20年3月5日厚生労働省告示第59号)のことである。その一部は、最近では「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(平成28年3月4日厚生労働省告示第52号)により改正され、平成28年4月1日から適用されている。
 保険薬局に係る療養に要する費用の額は、同告示「別表第三 調剤報酬点数表」により、算定するものとされている。

(4)保険薬局及び保険薬剤師に関する主な関係法令
ア 医療法
 医療の基本理念(薬剤師を医療の担い手として位置付け)〔1条の2第1項〕
 〃 (調剤を実施する薬局を医療提供施設として位置付け)〔1条の2第2項〕
 医師等の責務〔1条の4〕
イ 医薬品医療機器等法
 薬局の定義〔2条〕
 開設の許可(都道府県知事の許可)〔4条〕
 許可の基準(構造設備、薬剤師の員数)〔5条〕
  厚生労働省令で定める基準:
  ・薬局等構造設備規則
  ・薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令
 薬局の管理(管理者の指定)〔7条〕
 管理者の義務(従業者の監督、構造設備・医薬品等の管理、開設者への意見)〔8条〕
  第8条 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない。
  2 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局の業務につき、薬局開設者に対し必要な意見を述べなければならない。
 薬局開設者の遵守事項(薬局業務に関する事項、管理者の意見の尊重)〔9条〕
  第9条 厚生労働大臣は、厚生労働省令で、次に掲げる事項その他薬局の業務に関し薬局開設者が遵守すべき事項を定めることができる。
  一〜二 (略)
  2 薬局開設者は、第七条第一項ただし書又は第二項の規定によりその薬局の管理者を指定したときは、第八条第二項の規定による薬局の管理者の意見を尊重しなければならない。
 休廃止等の届出(薬剤師の変更、営業時間等)〔10条〕
 許可の取消し等〔75条〕
ウ 薬剤師法
 薬剤師の任務(公衆衛生の向上及び増進)〔1条〕
 調剤(薬剤師以外の調剤の禁止)〔19条〕
  第19条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。
  一〜二 (略)
 調剤の求めに応ずる義務〔21条〕
 調剤の場所(薬局以外での調剤の禁止)〔22条〕
 処方せんによる調剤〔23条〕
  第23条 薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
  2 薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
 処方せん中の疑義(疑義照会による確認)〔24条〕
  第24条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。
 情報の提供及び指導〔25条の2〕
  第25条の2 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
 処方せんへの記入等(調剤済みの旨、調剤年月日、記名押印等)〔26条〕
  第26条 薬剤師は、調剤したときは、その処方せんに、調剤済みの旨(その調剤によつて、当該処方せんが調剤済みとならなかつたときは、調剤量)、調剤年月日その他厚生労働省令で定める事項を記入し、かつ、記名押印し、又は署名しなければならない。
 処方せんの保存(調剤済みとなった日から3年間の保存義務)〔27条〕
  第27条 薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなつた処方せんを、調剤済みとなつた日から三年間、保存しなければならない。
 調剤録(備える義務、記載事項、最終の記入から3年間の保存義務)〔28条〕
  第28条 薬局開設者は、薬局に調剤録を備えなければならない。
  2 薬剤師は、薬局で調剤したときは、調剤録に厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。ただし、その調剤により当該処方せんが調剤済みとなつたときは、この限りでない。
  3 薬局開設者は、第一項の調剤録を、最終の記入の日から三年間、保存しなければならない。


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薬局・薬剤師の指導、監査のコラム


薬局・薬剤師の指導、監査のコラムの一覧です。
個別指導(薬局)の際に、また日常の薬局運営にご活用下さい。

 薬局の指導監査

1 薬局の個別指導と監査

 保険薬局・保険薬剤師の取消の実例

1  保険薬局・薬剤師の取消の実例(1):情報提供の個別指導

2  保険薬局・薬剤師の取消の実例(2):無資格調剤による取消

3  保険薬局・薬剤師の取消の実例(3):監査拒否による取消処分

4  保険薬局・薬剤師の取消の実例(4):虚偽の処方せんの不正請求

5  保険薬局・薬剤師の取消の実例(5):別薬局の調剤分の不正請求

 薬局・薬剤師の保険調剤の概説

1  薬局・薬剤師の保険調剤(1):保険薬局と医療保険制度

2  薬局・薬剤師の保険調剤(2):保険調剤のルールと調剤報酬

3  薬局・薬剤師の保険調剤(3):保険調剤と処方せん、調剤録

4  薬局・薬剤師の保険調剤(4):調剤点数表、調剤技術料

5  薬局・薬剤師の保険調剤(5):薬学管理料、服用歴管理指導料

6  薬局・薬剤師の保険調剤(6):薬剤師指導料、包括管理料

7  薬局・薬剤師の保険調剤(7):明細書、届出事項、標示・掲示

8  薬局・薬剤師の保険調剤(8):保険調剤の指導、監査

9  薬局・薬剤師の保険調剤(9):保険調剤と薬担規則

10 薬局・薬剤師の保険調剤(10):保険調剤の調剤基本料

11 薬局・薬剤師の保険調剤(11):保険調剤の調剤料

12 薬局・薬剤師の保険調剤(12):薬剤服用歴管理指導料

13 薬局・薬剤師の保険調剤(13):かかりつけ薬剤師指導料

14 薬局・薬剤師の保険調剤(14):かかりつけ薬剤師包括管理料

15 薬局・薬剤師の保険調剤(15):保険調剤の外来服薬支援料

16 薬局・薬剤師の保険調剤(16):在宅患者訪問薬剤管理指導料

17 薬局・薬剤師の保険調剤(17):在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

18 薬局・薬剤師の保険調剤(18):在宅患者緊急時等共同指導料

19 薬局・薬剤師の保険調剤(19):退院時共同指導料、情報提供料

20 薬局・薬剤師の保険調剤(20):薬剤料、特定保険医療材料料

21 薬局・薬剤師の保険調剤(21):評価療養 患者申出療養 選定療養

22 薬局・薬剤師の保険調剤(22):薬担規則の掲示事項

23 薬局・薬剤師の保険調剤(23):書面保存での情報通信技術利用

24 薬局・薬剤師の保険調剤(24):医療システムガイドライン

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