薬局の個別指導、監査に強い弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、匿名からの情報提供により個別指導が実施され、経過観察となりいったんは個別指導が終了したものの、他の医院での個別指導から薬局の不正請求の疑義が生じ、あらためて個別指導が実施され、監査、保険薬局の指定の取消しとなった実例をご紹介します。中国四国厚生局の平成30年10月付けの取消処分の実例であり、説明のため簡略化等をしています。
薬局・薬剤師の個別指導と監査については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。
【コラム】薬局の個別指導と監査の上手な対応法
他の医院の個別指導で薬局の不正請求の疑義が生じ監査となった薬局
1 監査に至った経緯
中国四国厚生局の公表資料によれば、監査に至った経緯は以下のとおりです。
1 匿名の者からの情報提供
平成24年12月、匿名の者から中国四国厚生局指導監査課に対し、不正な請求をしている旨の情報提供文書が寄せられた。
2 個別指導の実施、経過観察での終了
平成25年12月に薬局に対して個別指導を実施したが、情報提供の事実関係については確認できず、経過観察で終了となった。
3 他の医院の個別指導による不正請求の疑義
平成26年1月、他の医院に対して実施した個別指導において、薬局における調剤報酬について不正な請求が疑われたため、再度、個別指導の対象機関に選定した。
4 再度の個別指導の実施、監査の実施
平成26年9月、薬局に対して個別指導を実施し、調剤内容及び調剤報酬の請求に関して不正又は著しい不当が強く疑われたことから個別指導を中止し、平成27年1月から平成29年2月まで計9回の監査を実施した。
2 取消処分の理由
中国四国厚生局の公表資料によれば、取消処分の主な理由は以下のとおりです。
なお、取消処分にあたっては、平成30年10月22日に開催された中国地方社会保険医療協議会において、保険薬局の指定の取消及び保険薬剤師の登録の取消について、これらを妥当とする答申がなされています。
【保険薬局の事故】
1 無資格者処方箋での不正請求
医師の診察を受けることなく、無資格者に作成させた処方せんに基づき調剤が行われたものについて、調剤報酬を不正に請求していた。
2 第三者服用薬剤調剤の不正請求
記載されている患者以外が服用する薬剤の処方せんであるにもかかわらず、当該処せんに基づき調剤が行われたものについて、調剤報酬を不正に請求していた。
3 薬学管理料の不当請求
算定要件を満たさない薬学管理料に係る調剤報酬を不当に請求していた。
4 在宅訪問の不当請求
実際に行った在宅訪問について、実際には在宅訪問を行っていない薬剤師に薬剤服用歴の記録を不実記載させて、調剤報酬を不当に請求していた。
【保険薬剤師の事故】
1 無資格者処方箋での不正請求
医師の診察を受けることなく、無資格者に作成させた処方せんに基づき調剤を行い、調剤録に記載し、保険薬局に調剤報酬を不正に請求させていた。
2 第三者服用薬剤調剤の不正請求
記載されている患者以外が服用する薬剤の処方せんであるにもかかわらず、当該処方せんに基づき調剤を行い、調剤録に記載し、保険薬局に調剤報酬を不正に請求させていた。
3 薬学管理料の不当請求
算定要件を満たさない薬学管理料に係る調剤報酬を保険薬局に不当に請求させていた。
4 在宅訪問の不当請求
実際に行った在宅訪問について、実際には在宅訪問及び調剤を行っていない薬剤師に薬剤服用歴の記録を不実記載させ、調剤報酬を保険薬局に不当に請求させていた。
なお、原則として、5年間は再指定及び再登録を行わない。
【取消処分の根拠条文】
保険薬局の指定取消
健康保険法第80条第1号、第2号及び第3号
保険薬剤師の登録取消
健康保険法第81条第1号
3 調剤報酬の不正・不当請求額
中国四国厚生局の公表資料によれば、監査で判明した不正・不当件数、金額は以下のとおりです。
不正請求 5名 95万6473円
不当請求 21名 71万1590円
なお、監査で判明した分以外についても不正・不当請求のあったものについては、平成22年1月以降のものを自己点検のうえ、保険者等へ返還させることとしている。
保険薬局の個別指導、監査に臨む薬局の方は、お電話下さい。指導監査の対応を弁護士がアドバイスします。
薬局・薬剤師の指導、監査のコラム
薬局・薬剤師の指導、監査のコラムの一覧です。
他の医院の個別指導で薬局が監査となった実例の他、様々な実例を紹介しています。
個別指導(薬局)の際に、また日常の薬局運営にご活用下さい。
薬局の指導監査
1
薬局の個別指導と監査
保険薬局・保険薬剤師の取消の実例
1
保険薬局・薬剤師の取消の実例(1):情報提供の個別指導
2
保険薬局・薬剤師の取消の実例(2):無資格調剤による取消
3
保険薬局・薬剤師の取消の実例(3):監査拒否による取消処分
4
保険薬局・薬剤師の取消の実例(4):虚偽の処方せんの不正請求
5
保険薬局・薬剤師の取消の実例(5):別薬局の調剤分の不正請求
6
保険薬局・薬剤師の取消の実例(6):医院の個別指導からの監査
7
保険薬局・薬剤師の取消の実例(7):架空請求有罪判決での監査
8
保険薬局・薬剤師の取消の実例(8):処方せん付替えの不正請求