薬剤師の行政処分に強い、弁護士の鈴木陽介です。
薬剤師への行政処分、医道審議会のコラムの一覧をご紹介の上、薬剤師の行政処分の考え方(薬剤師法違反、医師法その他の身分法違反、薬事法違反、覚せい剤取締法違反、殺人、傷害、業務上過失致死、業務上過失致傷、交通事犯、道路交通法違反)をご説明します。
内容は、厚生労働省の資料「薬剤師の行政処分に関するの考え方の一部改正について(厚生労働省医薬食品局総務課長通知,平成25年3月14日)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。
薬剤師への行政処分、医道審議会のコラム
1 医道審議会での薬剤師への行政処分
2 薬剤師への行政処分(1):4つの基本的考え方
3 薬剤師への行政処分(2):薬剤師法違反、交通事故・交通事犯
4 薬剤師への行政処分(3):調剤過誤、調剤報酬の不正請求
薬剤師の行政処分に関する考え方:事案別考え方(1)
1 薬剤師法違反
薬剤師法違反
(無資格調剤、処方せん応需義務違反など)
薬剤師が行う、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどる行為については、医療をはじめとして公衆衛生の向上及び増進など、国民の健康な生活の確保に直結する極めて重要なものであることから、薬剤師法において、薬剤師の資格・業務を定め、原則、薬剤師以外の者が調剤や医薬品の供給などを行うことを禁止し、その罰則規定は、国民の健康な生活に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものであるが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師自らが薬剤師法に違反する行為は、その責務を怠った犯罪であることから、重い処分とする。
2 医師法、保健師助産師看護師法等その他の身分法違反
医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等その他の身分法違反
(無資格医業、無資格者の関係業務の共犯等)
医師や歯科医師が行う医業は、国民の健康に直結する極めて重要なものであることから、医師法、歯科医師法において、医師、歯科医師の資格・業務を定め、医師、歯科医師以外の者が医業、歯科医業を行うことを禁止し、その罰則規定は、国民保健に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。
また、保健師助産師看護師などの医療関係職種の身分法は、医師、歯科医師の補助者として医療に従事する者の資格・業務について規定した法律である。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するものであるが、薬剤師が医師法又は歯科医師法をはじめ他の身分法に違反する行為は、医療の担い手の一員として自らの任務を怠るものであるとともに、他の身分法を遵守せずに行った犯罪として、重い処分とする。
3 薬事法違反
薬事法違反
(医薬品の無許可販売又はその共犯、医薬品の製造販売及び製造に関する管理不行届等)
薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じることにより、保健衛生の向上を図ることを目的としている。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が薬事法に違反することは、基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とする。
4 麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反
麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反
(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法譲渡、不法譲受、不法所持、自己施用等)
麻薬、覚せい剤等に関する犯罪に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場合が多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっている。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、麻薬等の薬効の知識を有し、その害の大きさを十分認識しているにも関わらず、自ら違反したということに対しては、重い処分とする。
5 殺人、傷害
殺人及び傷害
(殺人、殺人未遂、傷害(致死)、暴行等)
本来、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師が、殺人や傷害の罪を犯した場合には厳正な処分をすべきと考えるが、個々の事案では、その様態や原因が様々であることから、それらを考慮する必要がある。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、殺人、傷害致死といった悪質な事案は当然に重い処分とし、その他の暴行、傷害等は、薬剤師としての立場や知識を利用した事案かどうか、事犯に及んだ情状などを考慮して判断する。
6 交通事犯(業務上過失致死・致傷、道路交通法違反)
交通事犯
(業務上過失致死、業務上過失傷害、道路交通法違反等)
自動車等による業務上過失致死(傷害)等については、薬剤師に限らず不慮に犯し得る行為であり、また、薬剤師としての業務と直接の関連性はなく、その品位を損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取り扱いとする。
ただし、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健康な生活を確保する任務を負うべき薬剤師としての倫理が欠けていると判断される場合には、重めの処分とする。
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