薬剤師の行政処分に強い、弁護士の鈴木陽介です。
サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、行政処分の対応業務を行っています。
医道審議会の対応は、弁護士に依頼すべきです。
薬剤師への行政処分、医道審議会のコラムの一覧をご紹介の上、薬剤師の医道審議会への対応法、薬剤師の行政処分と再教育研修制度の概要をご説明します。
薬剤師への行政処分、医道審議会のコラム
1 医道審議会での薬剤師への行政処分
2 薬剤師への行政処分(1):4つの基本的考え方
3 薬剤師への行政処分(2):薬剤師法違反、交通事故・交通事犯
4 薬剤師への行政処分(3):調剤過誤、調剤報酬の不正請求
薬剤師への医道審議会(行政処分)の対応法
医道審議会(薬剤師)の行政処分の流れ
薬剤師に対する行政処分は、厚生労働省に設置されている医道審議会で審議されます。
厚生労働省は、行政処分(免許取消し、3年以内の業務停止、戒告)をするか医道審議会で審議すべき事案を把握すると、当該審議のために、都道府県知事に対して、事実関係の報告を求める通知をします。当該扱いについて、保険薬剤師の取消処分と連動しており、不正請求により保険薬剤師の取消処分がなされると、当該事案が医道審議会で審議すべき事案との判断に繋がり得ることに注意が必要です。また、刑事罰を科された場合も、医道審議会で審議すべき事案との判断に繋がり得ます。自動車運転事故でも、その刑責の程度が重い場合などは、医道審議会での審議の対象となることがあります。
通知を受けた都道府県は、当該薬剤師に対し、事案の報告を求める書面を発送します。薬剤師は、当該書面を確認し、自らが医道審議会での行政処分の審議対象となったことを把握することが通常で、行政機関に行政処分対象事案報告書の提出をすべきことになります。
薬剤師が行政処分対象事案報告書を行政機関に提出すると、医道審議会で審議がなされ、その後、薬剤師が免許取消相当と判断された場合は意見の聴取が、業務停止命令相当と判断された場合は弁明の聴取がなされます。その上で、当該聴取を踏まえて医道審議会が最終的な行政処分の答申を行い、厚生労働大臣により行政処分(免許取消し、3年以内の業務停止、戒告)または行政指導(厳重注意)がなされる流れとなります。
行政処分が想定される薬剤師におかれましては、行政処分に至る手続きの流れを把握し、ワーストケースを想定しつつ、適切に対応することが重要です。
薬剤師の医道審議会対応のポイント
1 行政処分対象事案報告書を弁護士と作成する
薬剤師は、行政手続きにおける弁明書の作成の専門家ではありません。行政処分対象事案報告書は、記載内容によって処分の重さが変わり得る重要な書面ですので、専門家である弁護士に相談し、内容を練って提出することをお勧めします。
事実をありのままに記載すればよいと考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、薬剤師が自分で判断して行政処分対象事案報告書を作成した場合、特段の証拠も付さない、内容の乏しいものになりがちです。薬剤師の医道審議会に詳しい弁護士にサポートを依頼し、十分に打合せて対応することをお勧めします。
2 意見の聴取・弁明の聴取は弁護士を同席させる
薬剤師に対する医道審議会の免許の取り消し、業務停止の行政処分は、薬剤師に重大な不利益を与えるものです。可能な限り薬剤師に有利な処分とさせるために、医道審議会(薬剤師)に詳しい弁護士に依頼し、意見の聴取や弁明の聴取の手続きに同席させ、サポートをしてもらうべきです。
方針については、依頼した弁護士と協議して決定することになります。例えば、被害者がいるケースであれば、被害者との示談が重要ですし、また、関係者からの嘆願書も取得・提出した方が良いでしょう。事案によって、なすべきことが変わってきますので、依頼した弁護士と適切な対応を十分協議することが肝心です。
聴取の手続きに先駆けて、弁護士などと、問答のリハーサルを行う事も有用です。都道府県での意見・弁明の聴取手続きでは、オーソドックスな質問がなされますので、処分の対象となる事実に関して想定される質問に対して、有利な事実をきちんとコンパクトに説明できるように準備する必要があります。また、聴取手続きが終了したら、係る調書・報告書の閲覧も行い、必要に応じ証拠等を補充・追加提出することも検討すべきです。
行政処分(免許取り消し、業務停止)は、処分がなされた後に裁判で覆すことは困難です。処分がなされるまでに、医道審議会に対し、薬剤師に有利な事情を適切に主張し、証拠を提出することが重要です。
薬剤師の行政処分と再教育研修制度の概要
薬剤師への医道審議会による行政処分、再教育研修制度について、薬剤師の行政処分の在り方等に関する検討会の「
薬剤師の再教育及び行政処分の在り方等について」に基づき、簡単に説明します。
医道審議会での薬剤師への行政処分の類型
良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成18年法律第84号)による改正後の薬剤師法(昭和35年法律第146号。以下「法」という。)第8条において、厚生労働大臣が、法第5条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師として品位を損するような行為があった場合に行うことができる処分は、@戒告、A3年以内の業務の停止、B免許の取消し、となっています。
(参考)薬剤師法第5条
次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があった者
厚生労働大臣が、行政処分を行うに当たっては、あらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならないこととされています。そのうち、免許取消し処分をしようとする場合にあっては、自ら聴聞を行う又は都道府県知事に対して当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求める等、所定の手順を経る必要があります。また、業務の停止を命じる場合には、当該処分に係る者に対する弁明の聴取を都道府県知事に対して求める等の所定の手順を経ることが求められています。
処分の程度については、ケースバイケースであるものの、こういった例ではこのくらいの処分と、おおよその相場が形成されていると考えられます。
行政処分を受けた薬剤師に対する再教育研修
厚生労働大臣は、法第8条の2の規定により、戒告又は3年以内の業務の停止の処分を受けた薬剤師、又は免許取消し処分を受けた後に再免許を受けようとする者に対して、再教育研修を受けるよう命ずることができることとされています。
この再教育研修は、薬剤師としての倫理の保持及び薬剤師として必要な知識・技能に関する研修として規定され、再教育研修の修了後、申請により、厚生労働大臣は再教育研修を修了した旨を薬剤師名簿に登録することとされています。
また、厚生労働大臣による再教育研修の命令に違反して、再教育研修を受けなかった者に対しては、法第32条の規定に基づき、50万円以下の罰金に処することとされています。再教育研修の命令がなされた場合には、対象者は、研修を受けなければなりません。
医道審議会、行政処分に臨む薬剤師の方は、お電話下さい。医道審議会への対応を弁護士がアドバイスします。